自然なこころで生きる

たわいのない話

静けさのある処

大分県別府市といえば温泉が有名である。

また別府市は竹工芸の盛んな土地でもある。

 

f:id:satoufayukio:20170315082356j:image

別府公園

 

f:id:satoufayukio:20170315082452j:image

別府公園から遠く鶴見山を望む。

 

f:id:satoufayukio:20170315082557j:image

公園内には竹林がある。

 

皇居内の旧近衛師団本部のあった赤煉瓦の建物に伝統工芸館があった。

染織品の展示室から陶芸などを展示した部屋に入った。

ざっと部屋全体を見回したところ、壁に掛けられた竹の花入れに目が止まった。

装飾を排した本体の高さが15センチあるかどうかの小品だった。

展示されていた陶磁器は板谷波山、富本憲吉など日本陶芸史に偉大な名を残した名手の作品ばかりだった。

この小さな花入れはそれらの作品の存在を忘れさせた。

この花入れの寡黙な緊張感と高い精神性が展示室に静けさをもたらしていた。

近付いて作者の名前を見た。

生野祥雲斎。

別府市が生んだ竹工芸家だった。

竹工芸における最初の人間国宝だった。

 

それからしばらく妻は竹工芸に興味を示すようになった。

やがて一人の若い竹工芸家を知った。

遠く山村にある工房を訪ねた。(今は拙宅からさほど遠くない住宅地に転居した)

寡黙な若者だった。

妻は若い作り手を応援するためか竹のバッグを注文した。

期限を設けなかった。

数ヶ月後妻子を伴って作品を届けてくれた。

素晴らしい出来栄えだった。

私たちが彼に出せたのは我が家には些か重い出費となる金銭と信頼だったが、彼はそれ以上の「もの」を作ってくれた。

彼なら静けさのある作品を作っていくことだろう。

生野祥雲斎になれずとも。