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自然なこころで生きる

たわいのない話

A Taste Of Honey

高校生の頃にこの曲を初めて聴いた。

 この曲はビートルズ最初期にレコーディングしたものだが彼らのオリジナルではない。

ビートルズがカバーした曲は古臭く下らないと思いながらもこの曲は何故か好きだった。

しかし、深夜にこれらの曲を聴いていると、これから進もうとする自分の世界と曲の世界はあまりにも隔絶しているような気がした。

不良の匂いがした。

 

小学校の頃から不思議に「不良」と呼ばれる先輩に可愛がられた。

中学時代の友人は一人を除くとみんな「不良」だった。

彼らの成績は最低クラスだったが放課後は一緒に遊んでいた。

その中でも最も粗暴な「不良」と呼ばれた同級生と二人で通学していた。

一人で通学したかったが、通学路に家があった彼は毎日私が通学するのを見張っていた。

一人で通うことは叶わなかった。

彼らは皆ナイーブで優しく友情を大切にしていた。

件の同級生は一番最初にお祝いをしたいからと言って誕生日の午前零時に自宅までお祝いの品を届けてくれた。

彼らは外観と異なり酷く傷つきやすかった。

傷付く自分を守る為にあるいは傷付いたことを表現する為に暴力という形を用いているように感じた。

ナイフで喧嘩相手を刺した本物の「不良」である高校生の先輩がいた。彼は私と道で会う度に当地で一番の名門校に進学するために勉強するようにいつも励ましてくれた。

勉強しなければならないのは先輩あなたでしょうと心の中で言いながらうなづいていた。

一緒に通学していた件の同級生はその先輩のいる高校に進学し、先輩と組んで他の不良相手に喧嘩ばかりしていたという。その先輩はヤクザを殴りしばらくあるところに匿われていた。

彼らは粗暴だったが、不思議なことに私は一度も暴力を振るわれたことがなかった。

一度、一緒に通学していた件の同級生を怒らせたことがあったが、彼は必死で拳を握りしめて殴りかかろうとするのを止めていた。

 

もちろん私の交友関係を担任の先生はご存知だった。

家庭訪問時に担任の先生から「君が付き合うべき人間ではない」と言われた。

私のことを心配して下さっていることは有難かった。

しかし、自分の交友関係を人からとやかく言われる筋合いはないし、教師が人間関係の本質を無視していることに腹が立った。付き合いたくない人間はいるが、付き合うべきでない人間は果たしているのだろうか疑問だった。

 

高校に「不良」はいなかったし、私は自分の部屋の「孤島」で内面を築くことに没頭したのでその後彼ら「不良」と接点はなかった。

それにしてもなぜ高校に進学するまで「不良」と仲が良かったのだろうか。

何年か前、妻から「あなたは本当なら不良になっていたかもしれない。ただ不良になるには頭が良すぎた」と言われた。

そう言われて初めて「不良」と仲が良かった理由が何と無く分かった気がした。

 

私は「不良」になるまいと必死だったのだろう。

分厚い皮膚が心を覆っていて「不良」になるには優しくないしナイーブではなかったのだろう。

それに「家」を守らなければならなかった。

「不良」の匂いのするビートルズの最初期のカバー曲に隔絶した世界を感じたのは曲自体に「甘さ」を感じていたのだろう。必死に耐えてない甘い「不良」を。

 

それはそれとして改めて聴くと良い曲であると思う。

バックコーラスのジョン・レノンの声が若い、むしろ硬い。

これに対し、ポール・マッカートニーの声は若い頃からあまり変わっていないように思える。

演奏はそれなりだ。

この頃からラバーソウル、リボルバーまで彼らの曲には若さと疾走感があった。

しかし、すでにリボルバーでは暗い影が差し始めている。

 

 

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