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自然なこころで生きる

たわいのない話

気付かなかった恋?

バレンタインデイなので男女の話

 

高校2年の時、同級生のA子さんから手紙をもらった。

手紙といってもホームルームの時間に名前が記された紙をアトランダムに配りその人宛に匿名で手紙を書くというものだった。Xへの手紙といっていた。

私が受け取った手紙は、綺麗な字で書かれていた。女の子の字だった。

字の特徴からA子さんだとすぐに分かった。

彼女は色白でくりっとした目が特徴の上品な顔立ちだった。

物静かで真面目な文学少女だった。

 

私は、子供の頃から母に大学は地元の国立大学に入り地元の市役所に就職するように言われていた。私もそのつもりだったし、そうクラスメイトに話していた。

手紙の主はまずそのことに触れていた。

「あなたの夢は悪くないし既に自分の道を決めて歩んでいることは素敵です。でも他の世界に目を向けるのも悪くないと思います。」というような内容だった。

叶うなら東京か京都の大学の文学部で美学を学びたいと思っていた。

しかし、それは学力から見れば単なる憧れだったし、家の経済力が許さないと言われていた。

それでも上京したかったので新聞配達奨学生という制度に応募した。

それを知った母はキャンセルしてしまった。

結局、彼女が手紙で勧めてくれたように「他の世界」に行くことになった 。

 

 

続けて手紙には

スティーブ・マックイーンのように土にまみれ血の滲んだ唇が似合う顔をした男性になって欲しいと思います」

そんなことが記されていたと思う。

確かに当時の私は土にまみれてはいないし血の滲んだ唇の「男性」ではなかった。

体の線の細い大人しい「少年」だった。

 

 

同じく高校2年の遅い夏。

教室後方の掲示板に修学旅行の集合写真が貼られていた。

一人で写真を見ていると隣にA子さんが来た。

彼女は写真を見ながら「あなたはハンサムね」と言ってから私の顔を見た。

そんなことは思ったこともないし言われたこともなかったので当惑した。

なんと返答したやら。

 

 

先日、この手紙と写真のことを思い出し、同級生だった妻に話した。

「A子さんはあなたのことが好きだったと思う。

私じゃなくて彼女と付き合っていたら人生が変わった?」

聞かれて、まず、あの頃の自分の間抜けさ加減と幼さに情けなくなった。

もしA子さんと付き合ったら清らかで楽しい高校生活を送れたような気がした。

しかし、その当時私は自室の「孤島」で自分の内面を築くことに没頭していた。

もしA子さんのような綺麗な少女と付き合えば、彼女に夢中になり全てが台無しになっただろう。

だから付き合うには早すぎたし、後になって付き合えばあの頃のA子さんではないように思えた。

彼女と付き合うべきではないし付き合わなくて良かったと思った。

何より私には妻のいない人生はあり得ない。

少し間を置いて「人生に仮定法はないと思う。だからあり得ない」と見当外れに答えた。